
複雑に絡み合った課題も、整理すれば解決の糸口が見えてきます。
ここでは、課題解決に向けた3つの改革領域と、具体的な施策を紹介します。
それぞれ見ていきましょう。

採用から育成・評価・待遇に至るまで、総合的な人材マネジメントの仕組みを再構築することが不可欠です。
そのためには、以下4つの施策が柱となります。
求める人材に響く採用戦略へ改善する
職員の納得感を高める人事評価制度を構築する
成長を支援するキャリアパスを明確に示す
働きがいを高める福利厚生を充実させる
詳しく解説します。

人材紹介会社に登録して待つだけの採用活動では、競争に勝てません。
自院の魅力や理念を積極的に発信し、求める人材に直接アプローチする「攻め」の採用戦略への転換が必要です。
たとえば、病院のWebサイトやSNSを活用し、現場で働く職員のインタビューや1日の仕事の流れを紹介します。
これにより、求職者は働くイメージを具体的に持てるでしょう。
また、見学会やインターンシップの機会を設けることも、ミスマッチを防ぐうえで有効な手段となります。

職員の不満や離職の大きな原因の1つに、評価の不公平感があります。
院長の印象や年功序列に偏った評価ではなく、誰もが納得できる客観的で公平な人事評価制度の構築が急務です。
まずは、役職や職種ごとに期待される役割や目標を明確に定義します。
そのうえで、目標の達成度や業務への貢献度を可視化できる評価項目を設定しましょう。
評価結果を給与や賞与に適切に反映させることで、職員のモチベーション向上につながります。

若手や中堅の職員が離職を考える理由として、「この病院にいても成長できない」というキャリアへの不安があげられます。
職員一人ひとりが、将来の目標を持って働き続けられるよう、明確なキャリアパスを示すことが効果的です。
たとえば「3年後にはリーダー、5年後には管理職」といったモデルケースを提示します。
そして、そのステップアップに必要な研修や資格取得を病院として支援する制度を整えます。
成長できる環境があることは、職員の定着率を大きく向上させるでしょう。

給与や賞与といった金銭的な報酬だけでなく、働きやすさや働きがいを高める非金銭的な報酬も重要視されています。
とくに多様な働き方を支援する福利厚生は、人材確保における大きなアピールポイントです。
具体的には、子育て中の職員を支援する院内保育所の設置や、時短勤務制度の柔軟な運用があげられます。
職員食堂のメニューを充実させたり、リフレッシュ休暇制度を導入したりすることも、職員満足度の向上に効果的です。

長年の慣行で行われてきた業務フローを見直し、生産性を最大化する改革が求められます。
そのためには、以下3つの改革を検討しましょう。
これらの改革で、業務効率が向上します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)と聞くと難しく感じるかもしれませんが、まずは身近な業務から始めることが成功の秘訣です。
たとえば、電話予約をWeb予約システムに切り替えるだけでも、電話対応業務を大幅に削減できます。
来院前に行うWeb問診システムを導入すれば、患者の待ち時間を短縮できるだけでなく、カルテ入力の手間も省けます。
こうした小さな成功体験を積み重ねることが、院内全体のDXを推進する大きな力となるでしょう。

医師の働き方改革に対応するためにも、チーム医療の推進は不可欠です。
医師でなければできないコア業務に集中できるよう看護師や薬剤師、事務職員など他職種へのタスクシフトを積極的に進める必要があります。
たとえば、書類作成やデータ入力の一部を、事務作業補助者に任せることが考えられます。
そのためには、各職種の業務範囲を明確にし、情報共有を円滑にするための定期的な会議が有用です。
職種間の連携が、組織全体の生産性を向上させます。

ノンコア業務まで、すべてを院内の人材でまかなう必要はありません。
専門性の高い業務は、外部のプロに委託(アウトソーシング)することも有効な選択肢です。
代表例として、経理や労務、システムの保守管理などがあげられます。
これらの業務を外部に委託することで、職員は患者対応などの本来注力すべきコア業務に集中できます。
コスト削減だけでなく、業務の質の向上にもつながるでしょう。
専門家の活用は、効果的な経営戦略の1つです。

職員が同じ目標に向かって自律的に行動できるような、組織文化を形成することが、改革を成功させる土台となります。
そのためには、以下2つが重要です。
こうした取り組みへの投資が、大きな成果をもたらします。

「私たちは、何のためにこの病院に集まっているのか」という共通の価値観、それが経営理念です。
理事長の頭の中にだけある理念では、組織を動かす力にはなりません。
理念を全職員が自分事として捉え、日々の業務における判断基準とすることが肝心です。
そのためには、理事長自らが、あらゆる機会を通じて理念に込めた想いを繰り返し語り続ける必要があります。
理念に基づいた行動をとった職員をきちんと評価し、称賛する文化を育むことで、理念は組織全体に深く浸透していきます。

心理的安全性とは、職員が組織の中で、自分の意見や気持ちを安心して発言できる状態のことです。
この心理的安全性が低い職場では、職員はミスをおそれて新しい挑戦を避けたり、問題を1人で抱え込んだりしてしまいます。
職種や役職に関わらず、誰もが自由に意見交換できるミーティングの場を設けましょう。
また、失敗を責めるのではなく、失敗から学ぶことを推奨する文化を醸成することが大切です。
風通しのよい職場環境が、職員の主体性を引き出し、組織の成長を加速させます。